皆さんは病院でもらった薬、ちゃんと言われた通りに言われた回数、毎回必ず飲みきっていますか?
恥ずかしながら僕はけっこう飲むのを忘れてしまいます。
まず、うっかり忘れます。
外食などで物理的に飲めないこともあります。
あと一番大きいのが
なんか治ったっぽいっし、もう飲まなくてもいいよね!
これ。
これがあかん。
「きっちり言われた通りに飲んでくださいね」と言われてもこんないい加減な飲み方をしていた僕が
これからは抗生物質だけはちゃんと飲む!絶対にだ!!
と思わされてしまった抗生物質の話をご紹介したいと思います。
最初、けっこう長めの説明があるので、本題から見たい人は「3.抗菌薬だけは絶対飲め!自分のために絶対飲んだ方がいい!」から読んでください。
2020/2/17 追記。
いろんな検索ワードで見に来てもらってるんですが、このページに書いてないことが多いです。 ごめんなさい。
目次見て関係なさそうだったら戻るボタン押してください。 ほんとごめんなさい。
せめてものお詫びに書いてないキーワードのまとめみたいなページを作っていて、もう先生にチェックをお願いする段階に入っています。 なるべく全員の疑問に応えたいと思って作っているのでもうしばらくお待ちください。

今回の記事のチェックは松原良太先生にお願いしました
どこの誰とも分からない僕が医療系のことについて書いても誰も信用できないと思うので、毎回テーマ毎にお詳しい先生に内容の確認をしていただくようにしています。
今回は、口腔外科の専門医である松原良太先生にチェックをお願いしました。
現在は熊本県玉名市にある【まつばら歯科口腔外科こども歯科】にいらっしゃいます。
取材開始当時は九州大学病院顎口腔外科の外来医長でした。
こちらの松原先生のプロフィールを見てもらえば分かりますが、この先生、すごいんです……。 ご興味がある人は論文発表や学会発表もご覧になってみてください。
そもそも抗生物質ってなんだっけ?
まずは基本的な抗生物質についての説明を…。
勘違いしてやすい部分も説明しているのでできれば読んでいただきたいですが、
「そんなこと知っとるわ!」
「そんなもん興味ないわ!」
な人は次へ…。
「3.抗菌薬だけは絶対飲め!自分のために絶対飲んだ方がいい!」
そもそも抗生物質とはどういう薬なのか
化膿止め!
正解です。
感染したバイ菌を殺す薬!
正解です。
だいたいそういう薬なんですが、実はこれ、細かいところまで見ていくとけっこう難しいんです。 似た言葉に抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬がありますが、全て区別できますか?
まずはWikipediaを見てみましょう。
抗生物質とは「微生物が産生し、ほかの微生物の発育を阻害する物質」と定義される。 広義には、「微生物が産生」したものを化学修飾したり人工的に合成された抗菌剤、腫瘍細胞のような「ほかの微生物」以外の細胞の増殖や機能を阻害する物質を含めることもある。
大事なところはここ。
微生物が産生し
2009~2011年にドラマ『JIN-仁-』でもやっていたのでご存じの方もいるかもしれませんが、人類が史上初めて発見した抗生物質【ペニシリン】は青カビから精製したものだったんですね。
ペニシリンとは、1928年にイギリスのアレクサンダー・フレミング博士によって発見された、世界初の抗生物質である。
なので、
抗生物質=微生物が産生
というのが定義に含まれてしまったようです。
個人的に、よくもらっている抗生物質と言えばクラビットなイメージですが、はい、これがクラビットね。
はい!皆さん!
これは悪い見本です!
抗生物質の記事を書こうとしたからと言って、過去の薬コレクションの中から抗生物質が見つかってしまう…
これがあかん!
もらった時に飲みきってなかったってことですからね。
何錠かだけ減ってるとかもうほんと最悪な例…
絶対に!真似しないように!
話を戻して。
このクラビット、薬品名はレボフロキサシンと言い(クラビットは商品名)、第一三共によって発明された薬だそうです。
レボフロキサシンは、ニューキノロン系の合成抗菌薬(抗生物質)。 日本の第一三共によって発明され、先発薬名はクラビット。
って、え?発明?
「微生物が産生」はどこいった?
そうなんです。
新薬開発のたびに都合よく微生物由来の薬品が見つかるわけではないので、人の手によって合成された抗生物質もあるんです。
【抗生物質】で始まったはずが、新薬を開発していく過程で【抗生物質の定義】とは反してきてしまった。
そんなわけで医療業界では今は【抗生物質】ではなく、薬の作用から名付けられた【抗菌薬】と呼ぶのが通例だそうです。
【抗生物質】
【抗生剤】
【化膿止め】
様々な呼び方がありますが、今は【抗菌薬】と呼ぶのが正しい。
もう【抗生物質】で名前が通ってしまっているので、先ほどの引用のこの部分のような現状のようです。
広義には、「微生物が産生」したものを化学修飾したり人工的に合成された抗菌剤、腫瘍細胞のような「ほかの微生物」以外の細胞の増殖や機能を阻害する物質を含めることもある。
「細かいことを気にしないなら、抗菌薬と呼んでもらっても抗生物質と呼んでもらってもどっちでもいいよ」ってことですね。
というわけで、最初に書いた
そもそも抗生物質ってなんだっけ?
に対する答えとしては
抗菌薬のうち、微生物が産生したもの
となります。
これに習い、以下、【抗菌薬】で統一します。
抗菌薬は何に効く薬なの?
抗菌薬とは【菌に抗(あらが)う薬】と書きます。
つまり、おおむね
感染したバイ菌を殺す薬!
です。
菌…?
風邪…?
この【菌】がまたけっこう複雑でして…
一般に【菌】と思われていそうなものには3つあります。
【細菌】
【真菌】
【ウイルス】
「え、この3つ区別する必要あるの!?」と思われるかもしれませんが、薬のターゲットとして考えた場合には明確に区別する必要があります。
今回の記事でこれも説明しようと思ったんですが、あまりにボリュームが増えそうなので、またいずれ記事にしようと思います。
結論だけを書くと
一般的にバイ菌カテゴリで認識されていそうな細菌、真菌、ウイルスのうち、【細菌】をやっつける薬!
これが抗菌薬です。
ウイルスには効かないし、真菌にも効きません。 抗菌薬を飲んでもインフルエンザや水虫は治らないってことですね。
ちなみに、ウイルスをやっつける薬は【抗ウイルス薬】、真菌をやっつける薬は【抗真菌薬】と言います。
抗菌薬だけは絶対飲め!自分のために絶対飲んだ方がいい!
さて、本題です。
抗菌薬だけは絶対飲め!
こういう書き方すると
じゃー他の薬は飲まなくていいんだね!
となりそうですが、そういうことを言いたいわけではありません。
お医者さん、歯医者さんに出された薬は、全て指示された通りにきっちり飲みましょう!
でもね?
薬飲むのさぼっちゃうことあるよね?
忘れちゃうこともあるよね?
「薬はちゃんと飲んだ方がいいってこないだネットで見たなー、でもめんどくさいなー」ってなったとしてもね?
抗菌薬だけは絶対に言われた通りに飲みきれ!
自分でもいい加減なことをしていた僕がなぜこんなにも必死に語るのか。
まずは「抗菌薬をちゃんと飲んだ場合」にどうなっていくのか見てみましょう。
抗菌薬をちゃんと飲んだらこんな風に細菌が減っていきます
次のグラフは細菌学だったか病理学だったか薬理学だったか、とにかく抗菌薬の講義を聴いていた時に見せられたグラフです。
細菌の分布を表したグラフで、横軸が「抗菌薬に対する細菌の耐性の度合い」、縦軸が「その耐性を持つ細菌の数」となっています。
右側へいくほど『やっつけにくい細菌』、左へいくほど『やっつけやすい細菌』です。
初期状態での細菌の分布
人間にも『風邪を引きやすい人』『風邪を引きにくい人』がいるように、細菌にも抗菌薬に対して個体差があります。 初期状態では強い細菌も弱い細菌も少なく、真ん中くらいの耐性の細菌が最も多く分布しています。
抗菌薬投与後の細菌の分布
先ほどの状態に抗菌薬を投与すると、このように細菌が減っていきます。 耐性の強い側は薬が効きにくく、弱い側は効きやすいので、『やっつけにくい細菌』が多く残り、グラフは右側へ偏ります。
抗菌薬を処方通りに飲み続けると、さらに減っていきます。 『やっつけにくい細菌』もしっかり減ります。
最終的には感染を起こす前の状態にまで戻ります。
抗菌薬を途中でやめるとこんな風に細菌が……
今度はダメなパターン。
途中で抗菌薬をやめてみます。
ここまでは同じ展開ですね。
ここで
よし、もうだいぶ治ったぞ!
と抗菌薬を飲むのをやめてみます。
このまま放置するとどうなるのか。
ドーン!!!!!!!
と、こうなります。
最初の
この分布とはずいぶん違ってしまっているのが伝わっていればOKです。 右側の細菌ばかりが残ったので、今度は右側の細菌を中心に増殖してしまっています。
グラフに関するおことわり
抗菌薬を処方されやすい3日間など、長いスパンで見た場合には、細菌の分布はおおむねこのような推移をするようです。
しかしながら、抗菌薬には【時間依存性】【濃度依存性】などのタイプがあるようで、もっと短いスパン(24時間とか)で見た場合には、必ずしもこのように変動するわけではないとのことです。 あくまで僕たち素人が抗菌薬の作用を理解する上では問題ない内容、ということでご理解ください。
「また病気になったら同じ薬を飲めばいいんじゃない?」はダウト!
先ほどのグラフを見て
ふーん、細菌の分布が変わるのは分かったけど、何か問題があるの?
と思った人!
また病気になったら同じように薬飲めばいいんじゃないの?
と思った人!
よく考えてみてください。
グラフの右側は『抗菌薬に対する耐性の強い細菌』です。
最初の状態と違い、抗菌薬を途中でやめたことにより、抗菌薬耐性のある細菌ばかりが厳選されて増殖しています。
ここに前回と同じ抗菌薬を飲んだとしても、前回と同じように減っていってくれるんでしょうか?
答えはNo!
耐性の強い細菌ばかりが残っているので、改めて指示された通りに薬を飲んだとしても細菌が減りにくくなっているのです!
きっちり飲みきったとしてもおそらくこんな分布に……
初回であれば指示通りの服用できっちり治ったはずの病気が、前回の悪い飲み方のせいで、指示通りの服用では完治していません。
もし何度もこのような『抗菌薬を途中でやめる』を繰り返していると、どんどん細菌は悪い方に厳選されていき、その抗菌薬に対して非常に抵抗力のある細菌ばかりが残っていってしまいます。
そしていずれは薬が効かなくなる……
僕は講義でこれを見せられた時
ほー!なるほど!これは分かりやすい!こんな風になってるなら確かに耐性菌が増えるわ!
と妙に納得してしまいました。
あまりの感動に、未だにこのグラフがソラで書けてしまいます。
(僕の記憶を頼りにグラフを起こしましたが、医学的に問題のない範囲であることを松原先生にチェックしてもらっています)
抗菌薬を途中でやめるということは、 =自分の中で耐性菌を培養する と言っても過言ではありません!
これが薬剤耐性のメカニズムです。
耐性菌できるとどうなるの?
つい先日もYahoo!ニュースで見ましたが、
このままでは薬剤耐性菌による病気で2050年までに年1千万人が死亡する事態になり
ええええええええええええええええええ!?
死亡!?
1千万人!?
そうなのです。
耐性菌の問題は冗談事ではないのです。
今でこそ感染症は「抗菌薬を飲めば治る!」病気ですが、元々は擦り傷から細菌が感染しただけでも死に至る病でした。
そこへフレミングがペニシリンを発見し、人類は感染症に対する防御手段を得たわけですが、耐性菌を生み出すということはいずれはペニシリン以前の時代に逆戻り、再び「感染=死亡」という図式に…
上のニュースはこの危険性のことを言っているのだと思います。
最近ではウイルスのワクチンに対する反ワクチン運動もあり、感染症拡大の話はよく耳にします。
ことが感染症だけに、薬剤耐性菌問題も反ワクチン問題も、被害が個人のレベルでとどまりません。
数百万人規模で感染が拡大した後に、元をたどればどこかの誰かの「もう治ったから飲まなくていいよね!」だった、では笑い話にもなりません。
皆さん、ほんとに抗菌薬だけはきっちりと言われた通りに飲みましょう。
ついでに。
ワクチンに関しては「本当はどうなの?」と僕自身興味津々です。
是非どなたかにお話を聞いてこようと考えています!
耐性菌増加の中には医師側の問題も…
医師側の抗菌薬乱用で薬剤耐性菌が増加しているというお話です。
調べてみると
「風邪のような症状で簡単に処方しすぎ!」
という感じのようですね。
これを『乱用』とする根拠は、「そもそも風邪って細菌感染なのか?」という話なのではないかと思います。 これは次の記事でお話しする予定です。
でもねー。
どうなんですかねー。
医師側の乱用が仮にあったとしても、先ほどのメカニズムから考えると、最終的には「患者側がいい加減な飲み方をしたから」というところにいきつきそうな気がするんですよねー。
他にも患者さんの方から直接
「風邪です。抗菌薬ください。」
「熱があります。抗菌薬ください。」
「喉が痛いです。抗菌薬ください。」
って言ってきて、説明しても聞いてくれなくて、しょうがなく処方するケースもあるんじゃないかなーと思います。
この件に関しては調査不十分なので、今回はここで終わりにさせてください。 改めて記事を書くかもしれません。
副作用には注意してください!
飲め飲めと強く言ってきましたが、抗菌薬にも副作用があります。
強い副作用が出ている場合には投薬を中止する場合もあるようです。
必ず担当医に相談しましょう。
そもそも副作用がなんなのかについては、ちょっと面白いお話を後日紹介予定です。
抗菌薬の副作用には次のようなものがあります。
- 薬疹
- 肝障害・腎障害
- 下痢
- アナフィラキシーショック
1と2は抗菌薬に限らず、薬全般で起きる可能性がある副作用です。
抗菌薬と下痢
3の下痢はですね、抗菌薬の働きを考えると「おお!なるほど!」と思えるものです。
人間の腸内には消化を助ける大腸菌などの腸内細菌がいます。
抗菌薬は細菌をやっつける薬なので、この腸内細菌までやっつけちゃうんですね。
抗菌薬を飲む
→腸内細菌が減る
→消化が悪くなる
→下痢になる
おお!なるほど!
アナフィラキシーって?
有名な少年漫画にハチのアナフィラキシーショックが出てくるので知ってる人も意外と多いんじゃないかと思います。
アナフィラキシーとは、アレルギーの一種です。
一度異物として認識された物質が、再度体の中に入ってきた時に起こる場合があります。
先ほど出てきた薬疹もアナフィラキシーです。
アナフィラキシー=アナフィラキシーショックではなく、アナフィラキシーで血圧が低下し、ショック状態が起きたものをアナフィラキシーショックと呼びます。
飲み合わせにも注意
抗菌薬に限った話ではありませんが、薬同士の飲みあわせには注意しましょう。
薬同士に相性の悪い組み合わせがあり、一緒に飲むととんでもないことになります。
例えば、心筋梗塞の既往歴がありワーファリンを飲んでいる場合、抗菌薬によってはワーファリンの作用が増強され、血が止まらなくなる、など。
これは患者側が覚えておかなくてはならないことではないので、調べる必要はありません。 医師や歯科医師にちゃんと判断してもらうために、薬手帳を持参しましょう。
歯科で抗菌薬を処方されるケース
感染して炎症を起こしている場合
虫歯や歯周病の進行、外傷など、ケースとしてはいろいろあるそうですが、細菌感染によって炎症を起こしていると抗菌薬を処方されるようです。
病名としては歯槽膿瘍や骨膜下膿瘍など。
手術前の予防投与
手術=皮膚や粘膜を切開、なので、体の内側と口の中が一時的につながってしまいますが、実は口の中は細菌だらけです。 手術の際に口の中の細菌が血管に入り全身へ行き渡ると重篤な感染症になる場合があります。 心臓に感染すると感染性心内膜炎という病気に。
これを防ぐために手術前に抗菌薬の予防投与をするケースがあるそうです。
「手術?私には関係ないな」
と思われるかもしれませんが、歯科では小手術という扱いで様々な手術が行われています。
親知らずの抜歯もこれに含まれます。
歯科では意外と手術は身近なんですね。
この場合の抗菌薬は予防投与のため、基本的には継続服用することはありません。 術後も服用する場合もありますが、その場合は歯科医師の指示に従ってください。
歯周病治療での局所投与
歯周病治療の一環として、歯周病になっている部分に局所的に抗菌薬を浸透させるケースです。
こちらは内服ではなく、塗り薬のようなイメージです
歯科医院で歯科医師管理の下で行われるので、途中でやめる心配はありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
長い文章になってしまいましたが、最後まで読んでいただいてありがとうございます。
抗菌薬を途中で勝手にやめるというのは、自分の体を犠牲にして耐性菌を培養してるようなものです!
医師/歯科医師に指示された通り、きちんと飲みましょう!
(もちろん抗菌薬以外の薬もきちんと飲みましょう!)
「具合が悪いから…」と残っていた抗菌薬を自分の判断で飲むのもやめた方がいいんじゃないかと思います。
残っている量=本来の必要量より少ない量、のはずなので、これまた耐性菌を作りやすい飲み方だと思います。
また、今の自分の症状に「その薬が本当に合っているのか」。 これが判断できないから僕たちは医者ではないんです。 自分勝手に判断せず、必ず医師/歯科医師の診断を受けましょう。
抗菌薬の正しい理解が皆さまの健康に役立てるよう願っております。