薬局で買える薬、買えない薬、ありますよね。
「薬局で買える」を「処方箋があれば薬局で買える」も含むとややこしくなるので、以下、「処方箋なしで薬局で買える」という意味で使います。
なんとなくイメージとしては「お医者さんの管理の下で飲まないといけない薬」が「薬局で買えない薬」ですが、どういう理由でどう区分されているのか調べてきました。
結論だけ先に書いておくと、薬局で買えるのは「要指導医薬品」「一般用医薬品」という分類です。 あと「医薬部外品」と「化粧品」。
結果だけ知りたい人は最後のまとめを見てください。 ひと目で分かるグループ分けの模式図を作りました。
定めているのは薬機法という法律
薬機法って聞いたことなかったんですけど、元々あった「薬事法」という法律が2014年に名前が変更されたようです。
正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。 赤字の部分をとって「薬機法」というわけです。
「薬」に類するものは全部で3種類
「薬」に類するもの…を何て呼べばいいか分かりませんでしたが、薬っぽいものは大きく3つに分類されます。
それぞれがどういうものかは薬機法で明確に定義されていたので、それも次に書きます。
難しい話で眠くなる人は、
医薬品
=治療や予防など、医療に使う薬。
医薬部外品
=吐き気や口臭など、一部の症状の防止に使う薬。
化粧品
=美容目的で皮膚に塗ったりする薬。
くらいにして、すっ飛ばしてください。
医薬品の定義
薬機法 第2条1項で次のように定義されています。
- 日本薬局方に収められている物
- 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの
- 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの
「日本薬局方」というのは、厚労省が定めた医薬品の規格基準書だそうです。 日本で使える全薬品のパンフレットみたいなものなのかな。
なので簡単に、「病気の診断・治療・予防に使用される薬品」くらいでいいんでしょうか。
後で詳しく書きますが、医薬品は薬局で買える物と買えない物があります。
医薬部外品の定義
薬機法 第2条2項で次のように定義されています。
- 次の目的のために使用される物であつて機械器具等でないもの
- 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
- あせも、ただれ等の防止
- 脱毛の防止、育毛又は除毛
- 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物であつて機械器具等でないもの
- 前項第(2)号又は第(3)号に規定する目的のために使用される物のうち、厚生労働大臣が指定するもの
単純に作用の弱い薬かと思ったら、けっこう厳しく限定されてますね。
3つ目を見るに、医薬品であっても、厚労大臣が指定すれば医薬部外品になるっぽい。
医薬部外品は薬局で買えます。
化粧品の定義
薬機法 第2条3項で次のように定義されています。
人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。
ただし、これらの使用目的のほかに、第1項第(2)号又は第(3)号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
化粧品は用途が違うので分かりやすいですね。
もちろん薬局で買えます。
「医薬品」を購入できる場所で分類
先ほどの3分類のうち、「一部、薬局で買える」とした「医薬品」を購入できる場所で2分割します。
医療用医薬品とOTC医薬品の境界線は「医師/歯科医師が管理する必要のある危険性があるかどうか」でしょう。
OTC医薬品は、販売時の薬についての説明義務レベルで細分化されます。
医療用医薬品の定義
薬機法の中には見つけられませんでした(見落としの可能性大)。
薬機法では同じカテゴリーを表す言葉として「薬局医薬品」という名前が定義されていました。
要指導医薬品及び一般用医薬品以外の医薬品をいう。
分類は分かりやすいですが、これではどういう薬なのか分からないので、厚労省のページを見てみると、
医師若しくは歯科医師によって使用され又はこれらの者の処方せん若しくは指示によって使用されることを目的として供給される医薬品をいう。 なお、医療用医薬品及び一般用医薬品の両方に使用される製剤原料として製造又は輸入の承認申請を行う場合は、医療用医薬品として取り扱う。
また、次のいずれかに該当する医薬品は、原則として医療用医薬品として取扱うものとする。
- 麻薬、覚せい剤、覚せい剤原料、要指示医薬品、毒薬又は劇薬。ただし、毒薬、劇薬のうち、人体に直接使用しないもの(殺虫剤等)を除く
- 医師、歯科医師が自ら使用し、又は医師、歯科医師の指導監督下で使用しなければ重大な疾病、障害若しくは死亡が発生するおそれのある疾患を適応症にもつ医薬品
- その他剤型、薬理作用等からみて、医師、歯科医師が自ら使用し、又は医師、歯科医師の指導監督下で使用することが適当な医薬品
名前からイメージ出来るとおり、お医者さん・歯医者さん管理の下で使う薬のようです。
Wikipedia見てると医療用医薬品もさらに細分化されるようなんですが、今回のテーマとは少し逸れますし、公的文書での定義を見つけられなかったのでここまでにします。
すっきりしないので勉強しておきます。
OTC医薬品の定義
「OTC」という言葉がですね…
薬機法の中に見当たらないんですよね…
インターネットで調べてみると、「OTC」の意味は「Over The Counter」で「カウンター越しに買える医薬品」=「薬局で買える医薬品」のような意味らしいです。
薬機法内では「要指導医薬品」「一般用医薬品」という表記、厚労省のホームページでは「要指導・一般用医薬品」になっていました。
分類を見る限りは「薬局で買える薬の総称」なんだと思います。
2014年の薬事法改定の際に「要指導医薬品」が追加されたようなので、要指導医薬品+一般医薬品を囲うためにできた新しい言葉なのかもしれません。
要指導医薬品の定義
薬機法 第4条5項の3で次のように定義されています。
次の医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであつて、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものであり、かつ、その適正な使用のために薬剤師の対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。
- その製造販売の承認の申請に際して第14条第8項に該当するとされた医薬品であつて、当該申請に係る承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの
- その製造販売の承認の申請に際してイに掲げる医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が同一性を有すると認められた医薬品であつて、当該申請に係る承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの
- 毒性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品
- 劇性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品
1文がなげえええええええ!
1文で190文字ってありえないでしょ!
えー、要約すると、
医療用医薬品ほどは作用が強くないもの。
販売にあたっては、薬を飲む人に対して、薬剤師が直接、薬の説明と指導を行う必要がある。
みたいな感じですかね。 合ってるかな?
一般用医薬品の定義
薬機法 第4条5項の4で次のように定義されています。
医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであつて、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものをいう。
これまた分かりにくい書き方ですが、要指導医薬品と比較した場合、
薬を飲む人に、薬剤師が直接薬についての説明と指導を行う義務がないもの。
くらいかな?合ってる?
一般用医薬品はさらに細分化されるので、詳しくはそちらで。
一般用医薬品を3つに分類
先にまとめの図を。
詳しくはそれぞれの定義を見てもらえばいいんですが、簡単に「第1~3類医薬品は副作用などの程度によって分類」されているようです。
それに応じて、「誰が販売できるのか」「販売時にどの程度の説明義務があるのか」などが違っています。
第1類医薬品の定義
薬機法 第36条7項の1で次のように定義されています。
その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品のうちその使用に関し特に注意が必要なものとして厚生労働大臣が指定するもの及びその製造販売の承認の申請に際して第14条第8項に該当するとされた医薬品であつて当該申請に係る承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの
読みにくすぎるっ!!
「副作用で健康を害する可能性のある薬」のうち、特に注意が必要なもの。くらいですかね…。
法律得意な人は一読して頭に入ってくるんだろうか…。 せめて「及び」の前に読点が欲しい…。
第2類医薬品の定義
薬機法 第36条7項の2で次のように定義されています。
その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品(第1類医薬品を除く。)であつて厚生労働大臣が指定するもの
先にこっちを読むと分かりやすいかもしれない。
第2類医薬品が「副作用で健康を害する可能性のある薬」で、その中でも特に注意が必要なものが第1類医薬品だ、たぶん。
第3類医薬品の定義
薬機法 第36条7項の3で次のように定義されています。
第1類医薬品及び第2類医薬品以外の一般用医薬品
う、うむ…。
たぶん一番副作用が少ない薬のことでしょう。
結局、第1~3類医薬品はどう分けられているのか
定義を見る限り、副作用の程度(=医師管理じゃないところで飲む危険性)によって分けられているのでしょう。 一般用医薬品は処方箋なしで買えるから、リスクの高いやつには制限がかかる。
これだとなんか曖昧でピンと来ないので、僕たちにとってもう少し分かりやすい区別が、続く第9項、第10項に記載がありました。
販売できる人に違いがある
薬機法 第36条9項によると、「第1類医薬品は薬剤師が販売しなければならない」とあります。
第2~3類医薬品は「薬剤師又は登録販売者」となっていて、薬剤師でなくてもいいようです。
販売時に必要な説明の仕方に制限がある
薬機法 第36条10項にて、第1類医薬品は「薬剤師が書面にて説明しなければならない」とあります。
何やら要指導医薬品と似ていますが、「対面による」という部分が違うんでしょう。 要指導医薬品は薬を飲む本人に直接説明しないといけないけど、第1類医薬品は本人じゃなくてもいい。 「書面にて」というのは紙で説明することが大事なんじゃなくて、「飲む本人に届けてね」というニュアンスではないかと。
続いて第2類医薬品は「薬剤師又は登録販売者が説明するよう努めなくてはならない」。
一気に2ランクくらいおちました。 第2類医薬品は「薬剤師でなくてもいい」し、「なるべく説明した方がいいけど、必須ではない」。
最後に第3類医薬品は、特に何も書いてなかったです。 説明義務なし。
まとめ
まとめらしく図だけでざっくりとシンプルに。
まずは薬が目的別で3つに分類されます。 「医薬部外品」と「化粧品」は薬局で購入可、「医薬品」は一部が薬局で買えます。
次に医薬品を2つ(3つ?)に分類。 「OTC医薬品」は薬局で買えますが、「医療用医薬品」は薬局で買えません。
最後に一般用医薬品を3つに分類。 販売条件は微妙に違いますが、全部薬局で買えます。
一言でまとめると、
医療用医薬品だけが薬局で買えません!
以上!