この記事をおすすめしたい人
- 顔面神経痛という言葉に疑問を抱いた珍しい人
- とにかく暇で暇でしょうがない人
昔、何かのマンガで「顔面神経痛」という言葉を見ました。
顔面の神経の痛みだから、顔面神経痛。 何も不思議ではありません。
でも顔面神経痛はあり得ないはずなんです!
20年くらいモヤモヤしてたこの話を今日はします。
マンガの一コマに全力で考察!
このページの目次
まずは顔面神経痛とほんとに言ってたのか確認
元ネタは西森博之先生の「今日から俺は!!」です。 最近実写化もされてましたね。
この人の作品について語り出すと止まらなくなるほど大好きです。 読んだことない人はぜひ読んでみてください。 子供の時に読んでも面白くて、大人になってからは違う面白さが味わえる作品ばかりです。
オススメは…いややめとこう。 これが一番時間かかりそうだ。
「顔面神経痛」と言っていたのは、バカ番長ポジションの今井くん。
どういうシーンで言ってたかが思い出せず、1巻から順に読んでって、
あれ、俺、なんで「今日から俺は」読んでるんだっけ…?
と、なりながらも7巻の133ページに見つけました。
確かに言ってますね今井くん、「顔面神経痛」と。
「顔面神経痛」とは何かを考えてみる
肋間(ろっかん)神経痛とか、坐骨(ざこつ)神経痛とか、聞いたことないですか?
これらはそれぞれ「肋間神経」「坐骨神経」という名前の神経があり、その支配領域に沿って痛みが出ることを言うそうです。
ネーミングからすると「顔面神経痛」もこいつらの仲間でしょう。
「顔面神経痛」の「顔面神経」も実際に存在する神経で、名前の通り顔を走っている神経です。
うん、ここまではおかしくなさそう。
「顔面神経」って痛むのか?
????
いやね、顔面神経って脳に痛みを伝えるのかなという話です。
僕は解剖学を教わった時に「神経はまず成分で理解すべし」と教わりました。
「成分」というのは、神経には大きく2種類あり、
脳からの指令を伝える運動神経!
脳に情報を伝える感覚神経!
あとは内臓の筋肉や分泌腺を動かす自律神経ですね。 自律神経は今回関係ないので省略。
この3つが「神経の成分」です。
(本当はもっと細かく分かれます)
運動神経と感覚神経は、「脳から下りてくるのか」「脳へ上がっていくのか」と、向きが真逆の全く別の神経です。
痛みを伝えるのはもちろん感覚神経の方。
顔面神経にはこの感覚神経成分が含まれてんのかって話です。
含まれてなかったら痛くないですからね。
顔面神経の成分
顔面神経は早い段階で2本に分岐し、その片方(運動枝)を顔面神経と呼ぶことがあるんですが、こっちは、
顔の表情を作る筋肉を支配する運動神経!!
顔面神経っぽい働きでしょ。
枝分かれしたもう一方(中間神経)も含めると、成分は次のようになります。
- 表情筋他、顔面の筋肉の運動線維
- 口蓋(うわあご)と舌の前2/3の味覚線維
- 耳周辺の感覚線維
- 自律神経線維
感覚線維はありましたね。
正確な「顔面神経痛」はこういう痛み
顔面神経の成分が分かったところで、仮に「顔面神経痛」というものがあったらどういう痛みなのか考察してみましょう。
顔面神経痛(運動枝のみ)
運動枝には感覚神経の成分が含まれていないため、痛みは出ません。
顔面神経痛(中間神経含む)
先ほどの3のコレ↓。
耳周辺の感覚線維。
これが痛みを伝える神経です。
つまり!
顔面神経痛とは耳が痛い状態!!
という、ちょっと訳の分からない結果になりました。
今井くんが言いたかったのはおそらく「三叉神経痛」
先ほど↓のこのコマ。
これは今井くんが絡んできた中学生に対して言った台詞です。
さて、中学生は耳が痛そうにしてるのか確認してみましょう。
これは耳というより顔が痛そうな表情ですねー。
顔が痛くなるのは「顔面神経痛」ではなく「三叉神経痛」です。
三叉神経というのは顔面神経と双璧をなすような神経で、顔の筋肉をつかさどる顔面神経に対して、顔の感覚をつかさどるのが三叉神経です。
つまり今井くんが言いたかったのは、三叉神経痛!
マンガでこれやると99%以上の読者の頭の上に???が浮かびますね!
顔面神経痛は本当に存在しないのか?
参考文献の索引にて、「顔面神経痛」という言葉があるか調べてみます。
まずは南江堂の「人体解剖学」。
「顔面神経麻痺」はありますが、「痛」はありません。
お次に医歯薬出版の「口腔外科学」。
こちらも「痛」はありません。
最後に、西村書店の「カラー臨床 神経解剖学 機能的アプローチ」。
同様に「顔面神経痛」はありませんでした。
「三叉神経痛」はある
三叉神経痛の方はちゃんとあります。
まとめ
やっぱり今井はバカだった!
今井も谷川も大好きだぜ!
イヤッホーーーーーーーーーーーーウ!