オールセラミック一択じゃないの!?本職歯科医師が金歯を選ぶ理由

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投稿日時:2019年6月6日(2019年6月7日に更新されました)

この記事を書こうと思ったのは、実は飲み会での会話から。

あれはいつだったか、今回の記事監修をお願いした鎌田先生のところにお邪魔してお酒を飲んでいたんですね。

で、いつものごとくアレやコレやと歯科の話をしていて、
先生自身がクラウン(かぶせ物)入れることになったら素材は何にします?
と聞いたところ
「自分ならゴールド選ぶかな」と言われてしまってですね…
(条件つきです、詳しくは後ほど…)
えええええええええええ!? となりました。

当然セラミックと返ってくると思って次の話題を用意していたのに、もうそんなこと忘れてしまうくらい
なんで!?なんで!?

ふたりともお酒が抜けたところで、今回は改めてゴールド(金歯)の利点についてうかがってみました。

今回の記事のチェックは鎌田政彦先生にお願いしました

鎌田かまだ 政彦まさひこ
資格
  • 歯科医師
現在お勤めの医院
鎌田政彦先生のページへ

どこの誰とも分からない僕が医学について書いても誰も信用できないと思うので、毎回テーマ毎にお詳しい先生に内容の確認をしていただくようにしています。

今回は、九州大学出身の鎌田政彦先生にチェックをお願いしました。
現在は熊本県宇城市にある鎌田歯科クリニックにいらっしゃいます。

かぶせ物の素材3種類の特徴

今回は『セラミックと比較した場合の金歯のメリット』の話がしたいので、セラミックと金歯。 これに保険の銀歯を加えて、3種類の素材の特徴を見てみたいと思います。

最後に分かりやすいよう、一目で分かる図を用意しています。

実際には他にも素材がありますが、他の材料を含めた比較は下の記事で予定しています。

つめ物・かぶせ物の素材の選び方 (近日公開予定)

「どちらを選ぶか」となった場合に重要な要素として料金を載せています。

この記事で載せている料金は、今回話を伺った鎌田先生の医院の値段を参考価格としています。

保険の銀歯に関しては、同じ3割負担である限り同じ値段ですが、金歯とセラミックに関しては保険適用外診療となるため、医院によって値段が異なります。 患者さんが実際に治療を受ける医院での料金を保証するものではないので、その点はご了承ください。

銀歯の特徴

見た目の色合から「銀歯」と呼ばれる素材です。

実際の合金名は「金銀パラジウム合金」。
通称「金パラ」

「銀」はどこいってん!
と突っ込みたくなる素材です。

参考文献には「組成的には銀パラジウム金合金と呼ぶのが本来である」と書いてありました。 組成の半分くらいは銀で出来ている銀合金です。
つまり「銀パラ」

でも「金パラ」

僕ら患者から見た時の「銀歯」の最大の特徴は、
銀色!目立つ!

画像見てもらえば分かる通り、明らかに歯の色とは違うので、銀歯が入っていることがはっきり分かります。

あとは…
安い!

保険が効くのでかぶせ物1本4,500円ほど(3割負担時)。
金歯に比べて10倍以上、セラミックに比べて20倍以上違います。

金歯の特徴

金歯です。
素材屋さんから写真を持ってきたので実物の金歯とはちょっと色が違うかも…
イメージ図ということでご容赦ください。

こちら、銀歯とは違う色ですが、銀歯同様に明らかに歯とは違う色です。
金色!目立つ!!

にもかかわらず、保険適用とはならず、お値段は55,000円ほど。
金の値段は乱高下するので、鎌田先生のところでは金属代を時価としているようです。 今回は無理言って現在の相場を教えていただきました。

値段と色くらいしか分からない僕らからすると、なんで高いのか意味不明な素材ですよね。

オールセラミックの特徴

金歯や銀歯と違い、金属ではなくセラミックス(陶材)でできています。
ポーセレンという呼び方をする場合もあります。

「セラミックス」と言われても分かるような分からないような感じですが、お茶碗とか湯呑みの材質をイメージしてください。

わざわざ「オール」セラミックとしている以上、オールじゃないセラミックもありまして、そのお話は下の記事でやる予定です。

セレック?e-max?なんだそれ!セラミックの種類を説明します (近日公開予定)

セラミックの最大の特徴は、その白さでしょう!

適度に透明感もあるため、本物の歯にかなり近い見た目になります。 強度的にも強く丈夫で、変色もしません。
(ただし、お茶碗や湯呑みに近い素材なので、少し割れやすいという特徴があります)

その分お値段は高く、かぶせ物1本で12万円

分かりやすく図にしてみた

(クリックで拡大)

ざっくりと特徴をまとめるとこのような感じになります。 良いのが「○」、悪いのが「×」です。

セラミックの強度が「△」になっていますが、これは割れやすさを考慮しています。 純粋な強度的には「○」。

「経年劣化」は、劣化する方が「×」です。 「○」は劣化しない。

同様に「アレルギー」も、アレルギーが出る可能性がある方が「×」です。
金は非常に安定した(イオン化しない)金属ですが、歯科治療に使われるのは他の金属の混ざった金合金なので、完全にアレルギーがでないわけではないようです。

オレの金歯の印象

独断と偏見に満ちた僕の印象です。
監修の先生は一切関係ありません。

銀歯は…

見た目がアレだし、他にもいろいろ×ついてたけど…
まぁ保険が効くし、安いからいろいろとしょうがないよね。

金歯は…

なんで高いんだこれ。
ブルジョア感が出る?
きっとセラミック登場前の古い治療が今も残ってるだけだな。

セラミックは…

どう考えてもこれでしょ。 金も銀も目立つし、予算ある時なら絶対これにするよ。 3つ並べたら一目瞭然!

ところが…

歯科医師曰く、「自分なら金歯入れるかな」

マジかよ!!!!

ということで、ようやく本題です。

あ、先に断っとかないといけなかった。

確かに鎌田先生は金歯を選択するとおっしゃいましたが、無条件になんでもかんでも金歯を選ぶわけではありません。 条件付き。

前歯なら迷うことなくオールセラミック。
奥歯でも下顎なら金歯にするかセラミックにするか悩む。
上顎の奥歯なら金歯を選ぶと思う。

とのことです。

「なんだよ、結局だいたいセラミックじゃないかよ」

おっしゃる通りなんですが、そうではなくてですね、場所を限定するとは言え、金歯が選択肢に入ることにとても驚いたのです。

ちなみに下顎の奥歯が金歯確定じゃないのは口をあけるとけっこう見えるからだそうです。 上顎の奥歯はまず見えない。

こんなに口を開けて

ようやくこれくらい見えます。

要するに見た目が気になる部分はセラミック、そうでない部分は金歯、という選択の仕方のようです。

重ねておことわり

歯科医師が自分でこのように選ぶからといって、これが全ての患者さんにとってベストの選択肢であるような書き方はしないでほしい、と。

お口の中の事情、金属の相場、その人の好みや価値観によってベストの選択肢はかわります。 患者さんご自身が最も納得できる選択肢がベストの治療です。

今回のお話はあくまで私個人の好みなんだということで聞いていただければと思います。

セラミックにはない金歯の2つのメリットとおまけ

1.噛み心地が良い

これは今回、僕が一番興味を持った部分だったんですが、ゴールドはその適度な柔らかさゆえに噛み心地が良いそうです!

もちろん見た目だけで比較するとセラミックが断然綺麗ですが、見た目に関係ない部分に関してはゴールドも選択肢のひとつとして十分に成立していると。

2.割れない

先ほどセラミックのところでちょろっと触れましたが、セラミックの特徴に「硬いけどもろい」というものがあります。

「硬くてもろいってどういうこっちゃねん」

と思われるかもしれませんが、Wikipediaのセラミックのページを見るとこうあります。

硬度は高いが、脆性破壊しやすい

脆性破壊というのは、ある一定のラインまでは壊れも曲がりもせずに一定ラインを超えると一気にパリーンといってしまうような性質です。

まさにお茶碗や湯呑み。

歯科で使うセラミックも同様の性質を持っているため、大きすぎる力がかかると割れてしまったり欠けてしまったりします。

これも誤解をうみそうなのできっちりことわらせていただきますが、「割れやすい」というのは「セラミックいれてもどうせ割れるから意味ないよ」というニュアンスではありません。 食いしばりや歯ぎしりなど、通常の噛み合わせでは起きないような過負荷がかかるような状態でセラミックを入れてしまった場合、割れてしまうことがある、という感じでご理解ください。

その点、金歯は金属なのですり減りはしますが割れることはありません。

もし歯ぎしりや食いしばりのある方でセラミックでの治療を希望している場合は、事前にしっかりと担当医に相談しましょう。

おまけ 虫歯が再発しにくい

こちらはかぶせ物ではなくつめ物を金歯にした場合のメリットです。
つめ物はこういうやつね。

ゴールドは保険の金属に比べ柔らかいという特徴があります。 ゴールドの加工品には金箔のように薄く加工されたものもありますが、これは金の展延性という性質を利用しています。

展延性とは、固体の物質の力学的特性(塑性)の一種で、素材が破断せずに柔軟に変形する限界を示す。

この展延性のおかげで、ゴールドを歯に接着した後にゴールドのふちを磨いて薄く伸ばすことで歯とのすき間を極力少なくすることができます。
つまり、歯と金歯がぴたっとくっつく。

これにより歯と金歯のすき間から虫歯菌が内部へ侵入するのを抑えられるので、虫歯の再発を減らすことができます。

それに対し、保険の金属は硬すぎるのでふちを伸ばすことができず、すき間から虫歯菌が入ってくるので虫歯の再発が起こりやすいそうです。

まとめ

僕ら患者側からすると何がいいのか分からなかった金歯ですが、

  • 噛み心地が良い!
  • 歯ぎしりや食いしばりがあっても割れない!
  • 虫歯が再発しにくい!
  • 金属アレルギーになりにくい!

などのメリットがあり、セラミックと比べても、十分に選択肢に入る治療のようです。

「セラミックも良い」
「金歯も良い」
では僕ら患者サイドからすると非常に選びにくいんですが、実際に選ぶ際のジレンマについてはまた記事にしたいと思います!

つめ物・かぶせ物の素材の選び方 (近日公開予定)

おまけ

冒頭で、実はこの記事のネタはお酒飲んでる時の会話からだったことをお話ししました。

そっちに「えええええ!?」って思われた方もいるかもしれません。

僕はもう慣れてしまったので何も思わなくなりましたが、先生方みんな真面目なんでお酒飲んでても

歯医者の話!

マジですこれ。

参考文献

学建書院
スタンダード歯科理工学 第3版

医歯薬出版
クラウンブリッジ補綴学 第4版

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