セラミックの歯というのは、自然な白さで綺麗なやつです。
ただし、自費(2020年1月現在)。
保険だと銀歯やらプラスチックになってしまうので、できればセラミックにしたい、というのは歯を削った人なら誰しもが思うことでしょう。
保険と自費についてはこちら↓の記事を。
でもお高いんでしょう?
そうなんです、高いんです。
被せ物だと1本10万円くらいします。
そんなお高いセラミックが割れやすいだと…
割れると作り直しです。
また10万円です。
バカ言ってんじゃないよ!
というわけでですね、安心してセラミックの歯を入れてもらうためにも、
- 「セラミックの歯は割れやすい」は本当か嘘か
- なぜ「割れやすい」と書いているホームページと、「そんなことはない」と書いているホームページがあるのか
- ぶっちゃけセラミックの寿命は?
などなど、お話ししたいと思います!
このページの目次
今回の記事のチェックは大穂耕平先生にお願いしました
どこの誰とも分からない僕が医療系のことについて書いても誰も信用できないと思うので、毎回テーマ毎にお詳しい先生に内容の確認をしていただくようにしています。
今回は、九州大学出身の大穂耕平先生にチェックをお願いしました。
現在は福岡県福岡市で開業準備中だそうです。
「セラミックを勧める歯医者」と検索している人が多い
前置きなので飛ばしてもらって大丈夫です。
以前にも少しだけセラミックの話をしたのですが、何故かこのページに、
「セラミックを勧める歯医者」
という検索ワードでアクセスしてきてる人がいます。 それも一人や二人というわけではないんです。
「ん?金歯を勧めてるページなんだけど?」と不思議に思って実際に検索してみると、今回のテーマである「セラミックは割れやすい」を理由に、「やたらセラミックを勧めてくる歯医者は疑え!」みたいなページがちらほら。
なるほど。
もし本当にセラミックがすぐに割れてしまうようなら、いくら見た目が綺麗だからと言ってそんな粗悪品を勧められたのではたまったもんではありません。
そういう不安や心配から出てきた検索ワードなのかなーと。
余談:「セラミックを勧める歯医者」で金歯を勧めるページ…?
よく考えるとこれってめちゃくちゃ不思議な現象です。
検索した人の意図を考えるとなんら不思議ではないんですが、「セラミックを勧める歯医者」ですよ?
字面だけ追いかけると「セラミックの歯を勧めている歯医者さんのページ」が表示されそうじゃないですか?
これってGoogleが検索ワードの文字を見ているのではなく、検索した人の意図を理解している、ということだと思うんですよね。
- 「セラミックを勧める歯医者」で検索
- セラミックに対する不信感と解釈
- 金歯を勧めるページを表示
人の心情を読みすぎだろこれw
中に人でも入ってんのか…
「セラミックの歯は割れやすい」は本当か嘘か
さてさて、本題です。
「セラミックの歯は割れやすい」の真偽についてですが、
「割れやすいセラミックがあるのは本当」
だそうです。
何やらややこしいので順序よく説明しましょう。
今はセラミックの歯と言っても大きく3種類ある
こちら↓の記事でも執筆中なのですが、セラミックにも種類があってですね、医院ごとにどういう意味でセラミックという言葉を使っているかが違っているせいで、僕たち患者からするとかなり訳の分からんことになっています。
今回押さえていただきたいのは1点だけ。
セラミックの歯に使われている素材は、今では3種類あるぞ!
ということです。
- ポーセレン系
- 二ケイ酸リチウム系(e-max)
- ジルコニア系
これらを合わせて「セラミック」と総称しています。
(この3つが多いですが、他にも種類があるそうです)
二ケイ酸リチウム系は小難しい名前なので以降e-maxとさせてください。
割れやすいのはポーセレン系のセラミック
この3種の中で、ポーセレンが割れやすいセラミックです。
割れにくさの指標となる「破折強度」という数字を教えてもらったので、どれくらい割れやすいのか数値として見てみましょう。
セラミックの種類ごとの割れにくさ
セラミック4種(ジルコニアが2種)とCR(コンポジットレジン)の破折強度比較です。 数字が大きいほど割れにくい。
ポーセレン | 120 MPa |
---|---|
CR | 150 MPa |
e-max | 400 MPa |
ジルコニア(高透光型) | 700 MPa |
ジルコニア(従来型) | 1,200 MPa |
「Pa」(パスカル)というの圧力の単位です。 台風情報の「ヘクトパスカル」は聞いたことがあるんじゃないかと思います。 今回は「メガパスカル」です。
比較対象として「CR」というのが入っていますが、これは「コンポジットレジン」の略で、詰め物なんかによく使われるプラスチックのことです。
改めて数字を見てみると…
なんとポーセレン、プラスチックよりも割れやすい。
e-maxが歯(エナメル質)と同程度、ジルコニア系は歯よりもだいぶ硬い。
なので…、
ポーセレンについて書いている場合は「セラミックは割れやすい」となりますし、
ジルコニアまで含めた「現在の歯科セラミック事情」について書いている場合は「セラミックは割れやすいわけではない」となるわけです。
インターネットで検索すると両方の話が出てくるのはこういう理由です。
なぜ割れやすいセラミックを治療に使うのか
これは歴史的な事情によります。
歯科で最初に登場したセラミックがポーセレンだったからです。
うちのばあちゃんが歯医者だったんですが、ばあちゃんはセラミックではなく「ポーセレン、ポーセレン」言ってました。
近年、e-maxやジルコニアが開発されるまでは、セラミックと言えばポーセレンしかなかったんですね。
そしてこれこそが「セラミックは割れやすい」のイメージのルーツではないかと思います。
初期は割れやすいポーセレンしかなかったから、=セラミックが割れやすい、と認識されてしまったんじゃないかと。
なぜ昔の歯医者はそんな割れやすい素材を勧めたのか
それはもちろん、銀歯やプラスチックの歯に比べてポーセレンにはメリットがあったからです。
ポーセレンのメリット
- 歯と同じようにすり減ってくれる
- 見た目が自然で綺麗
- 歯よりも汚れが付きにくい
- 半永久的に変色しない
「すり減る」のが何故メリットになるのか理解しにくいですが、逆にすり減らなかった場合を考えてみてください。
隣の歯は加齢にともなって徐々にすり減っていきます。 セラミックがすり減らなかった場合、隣の歯よりも出っ張ってしまいます。 はみ出した歯は噛み合った時に優先的にガッツガッツン当たるため、噛み合ってる歯を傷つける原因になってしまいます。
長期的に見た場合、こういう事態になるので「歯と同じようにすり減る」のはメリットになるのです。
おそらく当時の歯医者さんもデメリットとメリットをきっちり説明していたんじゃないかと思います。 ばあちゃんはちゃんと説明してたと思います。
だから治療を受けた患者さん本人は割れたとしても意外と納得してたんじゃないかと思うんですよね。
ところが、割れた話を又聞きした人は「10万円もした」「すぐ割れた」のような特徴的な部分だけが耳に残り、それが今の「セラミックは割れやすい」イメージにつながったのかなーと。
現在のポーセレン事情
さすがにセラミックの主役ではなくなりましたが、ポーセレンは現在でも使用されています。
今でもポーセレンが使われる一番の理由は、その「見た目の美しさ」にあります。
e-maxやジルコニアも見た目の良さが改良されてきていますが、やはり強度を重視した結果、美しさではポーセレンに劣ります。 大穂先生の言葉を借りると「技工士さん次第でポーセレンの美しさは無限大」だとか。
もっとも、割れてしまっては元も子もないので、「奥歯では使わない」とか、「歯ぎしりのある人には使わない」とか、「表面だけポーセレンにする」のような配慮があります。
「表面だけポーセレン」というのはこんなやつ↓です。
ポーセレンの内側に強度の高いジルコニアがあるので、美しさと強度を兼ね備えたセラミックです。
歯医者さんによって「ジルコニアポーセレン」「ジルコニアレイヤリング」「ジルコニアボンド」のような名前で呼ばれています。
今は割れにくいセラミックがある
先ほど紹介したように、今は3倍割れにくいe-max、10倍割れにくいジルコニアがあります。
もはや「割れやすいからセラミックはダメ!」という時代ではありません。
割れにくさを重視する場所なのか、見た目の美しさを重視する場所なのか、歯医者さんがケースバイケースで最適なセラミックを選んでくれます。
割れにくいことは必ずしもメリットとはならない
従来のセラミックは割れやすいことが特徴だったので、e-maxやジルコニアの割れにくさに目が行きがちですが、「割れにくい」というのは必ずしもメリットではありません。
何故かというと、硬過ぎると今度は噛み合ってる歯を傷つけてしまうから。
特にジルコニアは人工ダイヤと呼ばれるほどに硬く、歯ぎしりや食いしばりがあると噛み合っている歯をゴリゴリ攻撃してしまいます。
大穂先生曰く、
硬ければいいというわけではないです。
歯に近い性質であることがベストです。
なるほど!
言われてみれば確かに。
そんな大穂先生がおすすめするe-maxについては次の記事をお待ちください!
全然なじみのない名前ですが、是非知っていただきたいセラミックです!
ぶっちゃけセラミックの寿命は?
まーた答えにくい話題ですが、頑張ってみます。
とりあえず…
セラミックは半永久的に劣化しない素材なので、セラミック自体に寿命というものはないと考えていいそうです。
それでもセラミックが寿命を迎えてしまうケースは次の2つ。
先にお断りしておきますが、セラミックの寿命はイレギュラーな事態で迎えるため、「○年!」のような具体的な期間としては答えられていません…。
1.境目から虫歯が入り込んだ
セラミックはそもそも汚れが付きにくいので、虫歯にも歯周病にも強いです。
ですが、「セラミックさえ入れていれば虫歯にも歯周病にもならない!」という意味ではなくてですね、歯磨きがうまくいっていないと当然虫歯にも歯周病にもなります。
境目から虫歯が入り込んでしまった場合は痛みが出てくるので、セラミックを取り除いて治療しないといけません。
歯周病がかなり進行してしまった場合には歯そのものを抜かなくてはいけなくなる場合があります。
これらは間接的に「セラミックの寿命」と言えるでしょう。
セラミックの再利用はできないの?
再利用とはこういう↓ケースです。
- 虫歯になりました
- セラミックを入れました
- すき間から虫歯が入りました
- 虫歯を削るためにセラミックを外しました
- 外したセラミックをもう一度付けれないのか?
さっきまでその歯に入ってたセラミックなんだから、もっかい入れ直してくれよ!ってことです。
えー…。
残念ながらこれはできないようです。
何故かというとセラミックを削って外さないといけないから。
素人感覚では削った分だけ盛ればまた使えそうですが、セラミックを後から盛り足すことはできないそうです。
自然に外れてしまった場合には再利用できることもあります。
が!
極めて希なケースだそうです。 基本的には作り直し。
2.歯ぎしりや食いしばりで割れた
e-maxやジルコニアの登場で、割れる可能性はかなり減ってきましたが、それでもゼロではありません。
噛む力が強い人や、歯ぎしりや食いしばりのある人は、その可能性が高くなります。
他には事故で大きく衝撃が加わって割れることもあります。
これもセラミックの寿命と言えるでしょう。
セラミックを長持ちさせる秘訣
原因は上に挙げた通りなので、答えは簡単です。
1.しっかりと歯磨きすべし!
せっかく入れたセラミックを長持ちさせるために、毎日気合い入れて歯磨きをしましょう。 虫歯や歯周病でセラミックがダメになる話はしたでしょ!
あと定期的に歯医者へも行くべし!
めんどくさい、じゃない!
車検と同じだ! 長持ちさせるために、ちゃんと歯磨きできてるのか、すき間から虫歯になってないか、確認してもらってくるべし!
ダメになったらまた10万円かかるんだぞ!
2.歯ぎしりや食いしばりがないか確認してもらうべし!
歯医者さんは歯ぎしり食いしばりがあるのか、口の中を診たら分かるのだ!
もし歯ぎしり/食いしばりがあると言われたら適切に対処してもらうべし!
寝てる時にマウスピース付けるだけでもけっこう割れるリスクを減らせるみたいだぞ!
3.セラミックを入れる前に相談すべし!
歯ぎしりがあるのに無理してセラミックを入れる必要があるのか、治療前に歯医者さんとしっかり相談すべし!
場合によっては金歯も候補に挙がるみたいだぞ!
まとめ
いかがでしたでしょうか? 今回も長い文章になってしまいましたが、最後まで読んでいただいてありがとうございます。
- 昔のセラミックは確かに割れやすかった
- 今のセラミックは割れにくいものがある
- セラミック自体に寿命はない
- 寿命はないが、虫歯や歯周病、歯ぎしりや食いしばりでダメになる場合がある
セラミックは僕たち患者にとっても、とても魅力的な素材です。
メリットとデメリット、自分の口の中の状態をちゃんと知り、一番自分に合ったものを選んでもらいましょう!