すごい騒ぎになってますね、新型コロナウイルス。
このサイトは歯科の話をするところで、おまけに僕自身は専門家ではないので、あまり鋭く切り込む話はできませんが、新型コロナウイルスの被害はみなさんと同じように被る可能性のある立場です。
ひとりの一般人として、新型コロナウイルスについて
どの程度の知識を持っていればいいのか
今回はそれをまとめてみたいと思います。
序盤は眠たいお勉強パートがあるので、苦手な人はお勉強パートのまとめからスタートしてください。
今回の記事のチェックは松原良太先生にお願いしました
どこの誰とも分からない僕が医療系のことについて書いても誰も信用できないと思うので、毎回テーマ毎にお詳しい先生に内容の確認をしていただくようにしています。
今回は、口腔外科の専門医である松原良太先生にチェックをお願いしました。
現在は熊本県玉名市にある【まつばら歯科口腔外科こども歯科】にいらっしゃいます。
新型コロナウイルスは【ウイルス】だからやっかい
ウイルスは感染症を引き起こすものです。
感染症を引き起こすものには他に細菌や真菌がありますが、それぞれに特色があり、ウイルスは細菌に比べるとそれだけで非常にやっかいな存在です。
まずはウイルスだからこその【やっかいさ】についてお話しします。
詳しくは次↓の記事で執筆中だったので、今回の件に関係ある部分だけを先にピックアップ!
ウイルスと細菌の違い
ウイルスと細菌はともに「人間に病気を引き起こす」ものですが、実はほとんど別物と言ってしまってもいいくらい構造が違います。
構造と言われても僕たちには「なんのこっちゃ」って感じですが、大事なところに関係があるので少しだけお勉強を…。
眠くなる人はこのパートのまとめへ…。
正常な人間の細胞、細菌、ウイルスをこんな感じで表したとします。
細菌はそれ自体が細胞なので、【細菌感染】というのは人間の身体の中に別の生物に寄生されているような状態です。
それに対してウイルス。
同じように細胞のイラストで描きましたが、実はこれは間違いで、
本当のウイルスは真ん中のにょろにょろの部分だけです。
にょろにょろの部分は遺伝子です。
ウイルスは細胞ではなく、その中の遺伝子だけしか持ってないんです。
(正確には遺伝子=ウイルス拡散の外側にカプシドと呼ばれる殻を持っています)
ウイルスに感染すると、体内で人間の細胞の中に入り込み、ウイルス入りの人間の細胞として分裂・増殖していきます。
細菌は人間の身体に寄生。
ウイルスはさらにその中の細胞に寄生。
ウイルスを殺す薬は作りにくい
人間の細胞と細菌、ウイルス(に感染した細胞)をこんな↓イラストで描きました。
人間の細胞と細菌は明らかに違う格好で、ウイルスとは似た格好になっています。 これは先ほどの説明通り、ウイルスが人間の細胞に寄生して存在しているためです。
さて。
これらが入り交じった中から細菌やウイルスを殺す薬を作るわけですが、大前提となるのが「人間の細胞は殺してはいけない」です。
人間の細胞もろとも殺してしまっていいなら薬の条件は簡単になりますが、人間の細胞ごと殺してしまっては本末転倒ですからね。 「人間の細胞は殺さない」が「細菌やウイルスは殺す」が抗微生物薬の必須条件になります。
そこで問題になるのがどうやって細菌やウイルスと人間の細胞を区別するのか。
薬の中に小さいオッサンが入っていたならオッサンが細菌とウイルスだけを選んでくれるかもしれませんが、残念ながらそんなことはなく、薬は人間の細胞と細菌やウイルスの構造上の違いを利用して化学的に攻撃します。
これが意味するところは、化学的に構造が違っているものは攻撃しやすく、似ているものは攻撃にしにくい、ということです。
うまく伝えられてますかね…。 薬からすると人間の細胞とウイルス入り細胞はパッと見、同じ細胞に見えるんですよ。 元が同じ細胞だから。 構造が似ているので健康な細胞も巻きこんでしまいやすい。
つまり、細菌を殺す薬は作りやすく、ウイルスを殺す薬は作りにくい。
人類はウイルスに対抗する手段をあまり持っていない
実際問題、人類は細菌に比べてウイルスへの対抗手段をあまり持っていません。
細菌感染の病気って、たいていのものは抗生物質(正しくは抗菌薬)飲んでれば数日で治るでしょ?
ウイルス感染はどうですか?
最も多いウイルス感染症の風邪。 抗ウイルス薬を処方されてますか?
インフルエンザはどうですか?
タミフルやリレンザ、ゾフルーザなどの抗ウイルス薬が登場してますが、発症後48時間以内に飲まないと効果がないとか、やっかいな副作用があるとか、いろいろめんどくさいのいがついてきて、特効薬と呼べるレベルのものではないでしょ?
それだけ抗ウイルス薬は作るのが難しいのです。
ワクチンは治療薬じゃないぞ
抗ウイルス薬が作りにくい都合、ウイルス感染では【ワクチン】という名前がよく登場します。
このせいか、たまにワクチンのことを治療薬のように解釈している人を見かけますが、全然違います。
治療薬というのは、「感染後に飲んで治る薬」のことです。
ワクチン接種って感染する前に、感染しないように打つでしょ?
ワクチンは治療薬じゃなくて予防薬なんです。
序盤のお勉強まとめ
ウイルスには治療薬がないことが多いんだぞ?
と言いたくて小難しいお話をしました。
ましてや今回のように新型のウイルスともなると、治療薬(抗ウイルス薬)も予防薬(ワクチン)もありません。
つまり、現時点では新型コロナウイルスは薬での対処ができない感染症だ、ということなのです。
厚労省からもこの↓通り。
有効な抗ウイルス薬等の特異的な治療法はなく、対症療法を行います。
そもそもコロナウイルスって?
今回の新型コロナウイルス。
新型と言われてもそもそものコロナウイルスが聞いたことがあるようなないような名前のウイルスですが、実は意外と身近なウイルスです。
一口にコロナウイルスと言ってもですね、たくさんのサブタイプが存在します。 インフルエンザにもA型やらB型やらがあるのと似たような感じです。
その中から有名なもの(僕が知ってたもの)を紹介します。
風邪の原因ウイルス
いわゆる風邪は「かぜ症候群」というんですが、【症候群】ってなんやねん!という問題はこちら↓の記事に譲るとして…
風邪の原因になるウイルスは何種類もあるぞ
だけ押さえてください。
この原因ウイルスの中にコロナウイルスも含まれています。
Wikipediaによると、ウイルス感染の風邪のうち、15%がコロナウイルスによるものだそうです。
SARSの原因ウイルス
SARS=重症急性呼吸器症候群です。
ニュースなんかで名前を見たことがあるかもしれません。 今もニュースで言ってますね。
2002年末に発見された新種のコロナウイルスで、言うならば「2002新型コロナウイルス」。
MERSの原因ウイルス
MERS=中東呼吸器症候群です。
こちらは「2012新型コロナウイルス」。
何故こうも新型ウイルスが生まれるのか
SARS、MERSに続き、今回の新型コロナウイルスが「2019新型コロナウイルス」。
どうしてこうもポンポン新型が生まれてくるのか。
これは、ウイルスとはそういうもん、だからです。
どういうことかと言うと…
さっきも説明したように、ウイルスはそれ自身では増殖できない不完全な存在です。
このようなウイルスが生き残っていくためには、少しでも強い個体が必要です。
そのためにウイルスは多様性を持って増殖していきます。
多様性というのは、ほとんど同じウイルスなんだけど少しだけ違う部分がある、という意味です。
ちょっとだけ酸に強かったり、ちょっとだけ放射線に強かったり、のような。
小さな範囲で起こっている【進化】と考えてもらうと分かりやすいかもしれません。
ほとんどの亜種はそのまま増えずに消えていきますが、希にそのまま増殖してひとつの種として成立してしまうものがあります。
これが新型です。
ウイルスはこのように小さな範囲で常に進化している存在なのです。
その割りにそんなに頻繁には新型ウイルスのニュースを見かけませんが、ニュースになるのは、従来型に比べて「人間に対しての被害が大きい新型」です。
今回の新型コロナウイルスはまさにこれ。
新型コロナウイルスの症状
新型コロナウイルスの症状を厚労省やWHOのページを調べてみたんですが、ちょっと見つけられなかったので、「WHOなどによりますと」と書いていたNHKのニュースから引用を。
今回の新型コロナウイルスに感染し、発症した際の主な症状は、
- 発熱
- せき
- 息苦しさなど呼吸器症状
- それに、筋肉痛やけん怠感など
重症化した場合、
- 肺炎や呼吸困難を引き起こしたり
- 腎臓の機能が低下したりすることがある
…症状は風邪とかインフルエンザに似てますね。
新型コロナウイルスは死に至る病なのか?
これだけ大規模に報じられると、僕ら一般人としては、
ただの肺炎止まりなのか、死に至る可能性があるのか
が、一番気になるところです。
これは厚労省のページでしっかりと確認できました。
2020/1/30の段階で、中国において感染者7,711人中、170人の死亡が確認されているようです。
割合的には致死率2.2%。
新型コロナウイルスは死に至る病でした。
まずはしっかり予防しましょう
先ほどの説明の通り、感染してしまうと今のところ特効薬はありません。
なので各自がしっかりと感染予防対策をしましょう。
感染経路は従来のコロナウイルス同様、飛沫感染・接触感染と考えられているようで、厚労省からはこのように↓。
一般的な衛生対策として、咳エチケットや手洗いなどを行っていただくようお願いします。
う、うむ……。
ワクチンはないのか?
ありません。
こちらのニュースを見るとワクチン開発の動きはあるようですが、2002年の新型コロナウイルスのSARSですらまだ開発段階らしいので、今日明日に新型コロナウイルスのワクチンが出来上がることはないでしょう。
もし感染してそうだったら
すぐにお医者さんにかかって適切に対処してもらいましょう。
お医者さんから見ても感染の疑いがあり、感染の有無の検査や隔離を提案された場合には進んで協力しましょう。 特に隔離はいやだと思うんですけども…。
新型コロナウイルスはWHOから緊急事態宣言が出るほどの感染症です。
まとめ
今回は新型コロナウイルスについて、僕ら一般人がどの程度の知識を持っておけばよいのか、まとめてみました。
- 現時点では新型コロナウイルスに有効な治療薬も予防薬もない
- 感染した場合には対処療法(解熱剤など)のみ
- 症状は発熱や咳などの肺炎症状だが、重篤になると死亡する場合もある
- 予防するには咳エチケットや手洗いうがいで、ワクチンはない
- 感染が疑われたらすぐに医療機関へ
- 検査や隔離など、医師の提案には協力しましょう
ニュースを見る時などの豆知識として活用してもらえれば幸いです!