口内炎、第2弾。
今回は
口内炎が全然治らないんだけど、これってもしかして…
の方のお話です、
「痛い、ご飯食べれない」の方はこちらの記事でお話ししています。
本題から見たい人は「治らない口内炎=がん?」から読んでください。
このページの目次
今回の記事のチェックは田中愼亮先生にお願いしました
どこの誰とも分からない僕が医療系のことについて書いても誰も信用できないと思うので、毎回テーマ毎にお詳しい先生に内容の確認をしていただくようにしています。
今回は、口腔外科出身の田中愼亮先生にチェックをお願いしました。
田中先生は、現在は香川県高松市にある【フレッシュ歯科】にいらっしゃいます。
どういう先生なのかはフレッシュ歯科公式サイトの田中先生のプロフィールを見てもらうとして、今回取材させてもらうにあたりいろいろ調べていた時に気付いたんですが、この人、Wikipediaの舌癌のページに名前載ってたよ…マジかよ…
口内炎についておさらい
詳しくはこちらの記事にて。
けっこう長いので3行でまとめてみた。
- 口内炎は口の中の粘膜に起きる炎症
- 口内炎には4種類あり、『いわゆる口内炎』はアフタ性口内炎と呼ばれるもの(アフタ=潰瘍)
- アフタ性口内炎の原因は多岐にわたっていて、「細菌感染!」のような分かりやすい原因ではない(=予防しにくい)
治らない口内炎=がん?
口内炎のように見える病気は多数あるようです。
=必ずしもがんというわけではない
口内炎と似た症状を示す病気の例
- 細菌やウィルス感染による口内炎
- カンジダ症
- 梅毒
- 天疱瘡
- ベーチェット病
- 悪性腫瘍
簡単にそれぞれを見てみると
細菌やウィルス感染による口内炎
細菌やウィルスの感染によってできる口内炎。 聞いたことのある病名も多く
- 麻しん(いわゆるはしか)
- ヘルペス
- 帯状疱疹、など
カンジダ症
口の中に白い苔のような症状が現れ、口内炎との鑑別が必要なケースがある。
カンジダという真菌の感染症。
梅毒
初期症状として口内炎のような潰瘍ができるケースがある。
梅毒トレポネーマという細菌感染症。
天疱瘡
歯茎に水疱(水ぶくれ)ができる病気で、口内炎に似た症状を示す場合がある。
自己免疫疾患。
ベーチェット病
症状のひとつに、アフタ性口内炎がある。
自己免疫疾患。
悪性腫瘍
前がん状態の白板症と呼ばれる状態が、口内炎と鑑別が難しい場合がある。
悪性だった場合、舌癌・歯肉癌・頬粘膜癌などの口腔がんとなる。
口内炎の「自己診断はおすすめしない」その理由
田中先生、曰く
歯科医師として、やはり自己診断はおすすめできない。 2週間たっても改善しない、もしくはいつもの口内炎と何か違う感じがしたり、痛みがひどければ、口腔外科への受診をおすすめします
なぜ!?
理由1:ステロイドを塗ると悪化する病気の場合がある
口内炎ができたらケナログ(もう販売していないそうです)のようなステロイド軟膏を塗る、というのはメジャーな対処法かと思います。
口内炎への対処としては決して間違っておらず、歯医者さんにかかった場合にも同様にステロイド軟膏を処方されます。
しかし!
先ほど挙げた「口内炎のように見える病気」の中にはステロイド軟膏を塗ると逆に悪化してしまうものがあります。
薬なのに病気を悪化させるってどういうこと!?
口内炎にステロイドを塗るのは、ステロイドが抗炎症作用(炎症を抑える働き)を持っているからです。 ステロイドはこの他にも免疫抑制作用というものがあり、体の免疫力を低下させる性質を持っています。
ダメじゃん!
いやいや、ダメってわけではないんです。
病気の中には免疫反応が過剰に起こるアレルギーや自己免疫疾患もあってですね。
この場合は、ステロイドは治療薬として機能します。
今回、ステロイドが悪化につながるのは、免疫抑制されると改善するものと悪化するものが混在しているせいなんです。
先ほどの一覧だと
細菌やウィルス感染による口内炎
→ 感染症なので悪化
カンジダ症
→ 感染症なので悪化
梅毒
→ 感染症なので悪化
天疱瘡
→ 自己免疫疾患なので改善
ベーチェット病
→ 自己免疫疾患なので改善
歯科医師でも診断が難しい場合があるというこれらの病気を、素人の我々が適切に診断し、ステロイドを塗るかどうかを決めるなんて無理です。
理由2:悪性腫瘍の場合がある
口内炎のように見えたのに、実は舌癌だった、という場合があるようです。
口腔がん(舌癌もこの一種)は初期症状がないそうです。 初期症状がないということは発見が遅れやすいということ。
口腔がんに限らず悪性腫瘍は、早期発見・早期治療が何よりも重要。 せっかく異変に気づけたのなら、口腔外科を受診して適切に対処してもらいましょう。
がん?癌?どちらが正しい?
当サイトの記事チェックに協力いただいている松原良太先生のお勤め医院に面白い話が書いてありました。
「がん」「癌」、どちらも正しくて、ひらがなの場合は悪性腫瘍の総称、漢字の場合は上皮性の悪性腫瘍に限定、ということのようです。
「がん」と「癌」
「口腔がん」のようにひらがなで「がん」と書かれている場合と、「舌癌」のように漢字で「癌」と書かれている場合があるのにお気づきでしょうか?
これは決して変換し忘れてひらがなになっているわけではなく、医療従事者は「がん」と「癌」を明確に使い分けています。
「がん」には、がん細胞が集まってできる「固形がん」と造血組織の異常による「血液がん」があり、さらに「固形がん」については「癌腫」と「肉腫」の2つに分類されます。
この分類のうち、上皮性細胞(皮膚や粘膜の細胞)から悪性腫瘍になったものを「癌腫」と呼びます。
漢字の「癌」はこの「癌腫」=上皮性細胞由来の悪性腫瘍であることを示しています。
一方、ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全てを総称する時に使います。
顎口腔領域の悪性腫瘍には癌腫、肉腫、悪性リンパ腫などの複数が含まれています。
そのため「口腔がん」とひらがなで表記しています。
結局、口内炎っぽいものが出来た時にどう対処すれば間違いがないのか
1.まずは様子を見る
口内炎であれば通常10日前後で完治します。 なので様子見の期間は最大2週間。
この間にステロイド軟膏を使用するかどうかは先生方によって異なるようです。 担当医の指示を仰ぎましょう。
2.2週間経っていないが、何かおかしい感じがする
痛みがひどい、いつもの口内炎と何か違う感じがする、など、何かしらの違和感がある場合はすぐに歯科口腔外科へ。
3.2週間経ったが治る気配がない
ただの口内炎ではない可能性が高いです。 今すぐ歯科口腔外科へ。
がんの不安がある場合は、セルフチェックしてみてください。
手順1:明るい光の下で、鏡を使って(入れ歯があれば外して下さい)。
- 唇の内側と下あごの歯ぐきを見て、触って下さい。
- 頭を後ろに傾けて、上あごの歯ぐきとその間を見て、触って下さい。
- 頬の(裏側)の粘膜を見て、触って下さい。
- 舌を前に出して、舌の両脇、舌と歯ぐきの間を良く見て、触って下さい。
- 下あごから首にかけて触って見て下さい。
手順2:良く観察し、チェックしましょう!(口腔がんの実例を写真で示します。)
- 白い斑点や赤い斑点はありませんか?
- 治りにくい口内炎や、出血しやすい傷はありませんか?
- 盛り上がったできものや固くなった所はありませんか?
- 顎の下と首の脇に腫れはありませんか?
- 食べたり飲みこんだりがスムーズにできますか?
口腔外科って書いてあればどこでも診てもらえる?
口腔外科≠口腔がんかどうか診てもらえる
のようです。
歯医者さんって看板やチラシに
- 歯科
- 矯正歯科
- 小児歯科
- 歯科口腔外科
の4つしか書けないんですね。
(たまに「インプラント科」みたいな看板を見かけますが、アレは医療法的にアウト)
口腔外科疾患は非常に多岐にわたっていて、先生方によって対応できる疾患の範囲が違います。
(想像していたよりだいぶ多かったので割愛、詳細は日本口腔外科学会のページを参照)
にも関わらず標榜には「歯科口腔外科」としか書けないので、患者さんとの間に誤解が生じやすいようです。
これ、患者サイドからするととても困ります。
今回の場合、患者側が求めているのは
「口内炎と口腔がんを見極める自信のある口腔外科」
これをどうやって探せばいいのか。
1.大学病院へ行く
歯科口腔外科のある大学病院や市民病院など、総合病院へ行くのが一番安心できると思います。
2.ホームページに口腔がん検診が書いてある医院へ行く
総合病院は予約も待ち時間も長いし、場所も遠い!
ただの口内炎かもしれないのに、そんな手間暇はかけていられない!
その場合は、近くの歯医者さんで、ホームページに「口腔がん検診やっています」と書いてあるところを探すのはどうでしょうか?
ホームページで告知しているところであれば、
=診断できる自信がある
ということだと思います。
3.近くの口腔外科に電話して聞く
ホームページなどに特に表記がなかった場合、これが一番確実だと思います。
田中先生のフレッシュ歯科では口腔がん検診をされているそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
長い文章になってしまいましたが、最後まで読んでいただいてありがとうございます。
簡単にまとめますと
- 口内炎に似た病気はたくさんある!
- その中にはステロイドを塗ると悪化するものもある!
- 悪性腫瘍の場合もある!
- 2週間様子を見て治る気配がなければ口腔外科へ!
- いつもの口内炎と違う感じがしたらすぐに口腔外科へ!