このページの目次
今回の記事のチェックは松原良太先生にお願いしました
どこの誰とも分からない僕が医療系のことについて書いても誰も信用できないと思うので、毎回テーマ毎にお詳しい先生に内容の確認をしていただくようにしています。
今回は、口腔外科の専門医である松原良太先生にチェックをお願いしました。
現在は熊本県玉名市にある【まつばら歯科口腔外科こども歯科】にいらっしゃいます。
セレコックスの添付文書を調べてみた
添付文書というのは、薬の公式マニュアルと思ってください。
さっそくセレコックスの添付文書(PDF)の副作用の項を見てみると
確かにありました、体重増加。
よくこんなの見つけてきますね…。
0.1%未満なので、1,000人にひとりも出ないくらいですが…
そうか…セレコックス太るのか…
道理でデb(略
なぜセレコックスで太るのか、オレなりに考えた
薬の副作用というのは、その化学的な原理(作用機序)からやむなく出てしまうもので、ゲームで見かけるこんな設定↓とは意味が違います。
「鎮痛作用を得るが、体重が25%増加する」みたいな。
セレコックスに体重増加の副作用があるなら、セレコックスが抗炎症作用を発揮する過程のどこかで、体重増加につながるメカニズムが必ずあるはず…。
セレコックスが作用するのはCOX-2という酵素なので、COX-2の作用、続いてCOX-1の作用、ついでにCOX-3の作用を調べなおしてみましたが…
分かんねえええぇぇぇぇええぇ!
なぜセレコックスで太るのか、先生に答えを聞いた
松原先生の解答↓。
えー、だいぶ難しいので翻訳します!
セレコックスの作用を2行で説明
まず、セレコックスの作用はCOX-2という酵素の邪魔をすることです。
COX-2は炎症(痛みや発熱など)を起こすプロスタグランジン(以下、PG)という物質を作っているので、COX-2の邪魔をすると炎症が治まります。
PGの作用を1行で説明
PGは炎症を起こすついでに、血管を拡張する作用があります。
体重が増える原理を2行で説明
PGは血管を拡張するので、邪魔されると逆に血管が収縮します。
結果、血流が減り、腎臓に血液があまりいかないので尿の量が減り、体内に水分が多く残るようになる。
つまり、セレコックスの副作用でおしっこの量が減り、その分の体重が増えるということでした!
「太る」とはちょっと違いましたね。
体重は増加するけど、太る(脂肪)ではない。
副作用の「体重増加」を「太る」と勘違いして、1カ月に400人くらいが「セレコックス 太る」って検索するのはなんとも面白い。
添付文書を読んでる人、いっぱいいるんだなー。
他の解熱鎮痛剤でも同じ副作用があるのでは?
「体重増加」が「太る」というニュアンスではなかったので、もう気になる人はあまりいないと思いますが調べてみました。
松原先生の言っていた「セレコックスなどのNSAIDs」。 NSAIDsというのはステロイドじゃない抗炎症薬全般を指す言葉で、単に解熱剤や鎮痛剤と思ってください。
代表的な解熱鎮痛剤の添付文書に体重増加の記載があるか調べてみます。
次の表の「体重増加」は「体重増加の副作用の記載があるかどうか」です。
「尿量 減」は、併用注意(薬の飲み合わせ)の項で利尿薬の作用減弱の記載があるかどうかです。
はっきりと体重増加の記載があるのはセレコックスの他にインドメタシンのみ!
ただ、全ての解熱鎮痛剤で利尿作用の減弱が確認できたので、尿量が減る作用はある。
発生頻度や程度で体重増加を記載するかどうかが決まってるんでしょうたぶん。
まとめ
セレコックスに体重増加の副作用はあるが、太るという意味ではない!
発生頻度も1,000人にひとり未満!
以上!
参考文献
医歯薬出版 口腔生化学 第6版
医歯薬出版 現代歯科薬理学 第6版