セレコックスというのは痛み止めの一種です。
こんな↓綺麗な緑色のパッケージ。
似た作用の薬にロキソニンがありますが、ロキソニンは痛み止めだけじゃなく、熱冷まし(解熱剤)としても処方されます。
作用が似てるならセレコックスにも解熱作用があるのでは??
え、ないのか?
今回はそんなお話です。
今回の記事のチェックは松原良太先生にお願いしました
どこの誰とも分からない僕が医療系のことについて書いても誰も信用できないと思うので、毎回テーマ毎にお詳しい先生に内容の確認をしていただくようにしています。
今回は、口腔外科の専門医である松原良太先生にチェックをお願いしました。
現在は熊本県玉名市にある【まつばら歯科口腔外科こども歯科】にいらっしゃいます。
セレコックスで熱が下がるのか実際に試してみた
先日、都合よく(?)けっこう重めの風邪を引いたのでセレコックスで熱が下がるのか実験してみました。
セレコックス飲む前の体温↓。 熱でフラフラしてたのでピンボケしてます、ごめんなさい。
セレコックス飲んだ後の体温↓。
38.5度から36.4度に下がったのでだいぶ楽になりました。
厳密な実験ではないので他の要因で熱が下がった可能性は否定できませんが、「今回」「僕は」熱が下がりましたよーというサンプルです。
この時期(2020年2月現在)の発熱ってもしかして…?
めっちゃ不安でした。
もしかして新型コロナ!?
鼻も喉も酷かったので、マスクフル装備で病院へ。
レントゲンで肺炎の所見なし。
ついでにインフルの抗体検査もしてもらって陰性。
無事にただの風邪でした。
セレコックスは解熱剤なのか?
実験ではセレコックスに解熱作用があったような結果になったんですが、セレコックスは解熱剤としては処方されません。
薬の公式マニュアルとも呼べる添付文書というのがあるので、セレコックスがどういう時に処方される薬なのかを確認してみます。
まずは比較対象として、解熱剤としても処方されるロキソニンの添付文書(PDF)を。
効能・効果
(中略、鎮痛に関する記載)
下記疾患の解熱・鎮痛
- 急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
「急性上気道炎」というのはいわゆる風邪のことで、風邪の時の熱冷ましに使えますよーとはっきり書いてあります。
対してセレコックスの添付文書(PDF)には、
効能・効果
下記疾患並びに症状の消炎・鎮痛
- 関節リウマチ
- 変形性関節症
- 腰痛症
- 肩関節周囲炎
- 頸肩腕症候群
- 腱・腱鞘炎
手術後、外傷後並びに抜歯後の消炎・鎮痛
と、「鎮痛」の事しか記載がありません。
結論、セレコックスは解熱剤ではない。
「消炎」というのは?
「消炎」というのは読んで字の如く「炎症を消す」ことです。
具体的には次の5つのことで、「炎症の五大徴候」といいます。
- 発熱(熱が出る)
- 発赤(赤くなる)
- 腫脹(腫れる)
- 疼痛(痛みが出る)
- 機能障害
考え方によって機能障害は含めない場合もあって(炎症そのものではなく、炎症の結果だから)、僕は尊敬する先生の教えの影響で4大徴候派です。
(松原先生も4派でした)
炎症がこういう4つの症状が出ることなので、消炎というのはこれら4つの症状を改善することです。
ガッ!
鎮痛と解熱を分けてあるところを見ると、添付文書で「消炎」といった場合には残りの「発赤、腫脹の改善」ということなんですかね。 松原先生に聞いたらなんか割と曖昧な感じらしいです。
セレコックスに解熱作用はあるのか?
僕は「ある!」と言いたいので、いくつか根拠を示したいと思います。
セレコックスの作用的には解熱作用があって然るべき
セレコックスは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)という分類の薬です。
何やら難しい名前ですが、「炎症を抑える薬(ステロイドは除く)」という意味です。
炎症はさっき話した通り、発熱を含む4徴候のことなので、炎症を抑える際にその中の疼痛だけを器用に抑える、なんてことにはならないはず。
作用機序的にも、セレコックスは発熱の原因になるPGE2という物質を抑制するので解熱作用がないと考える方が難しい。
この考え方の裏付けとして、次の根拠で製薬会社の実験結果を示します。
医薬品インタビューフォームに解熱作用に関する記載がある
薬の公式マニュアルには添付文書の他に、医薬品インタビューフォームというものがあります。 添付文書を補足する詳しい内容のやつです。
セレコックスの医薬品インタビューフォーム(PDF)を見てみると、
<参考>解熱作用
ラットLPS誘発体温上昇モデルを用いて、セレコキシブ0.3~30mg/kg及び既存のNSAIDの解熱作用を評価した。
LPSによる発熱惹起5時間後に直腸温を測定して体温上昇を確認後、各薬剤を単回経口投与し、投与2時間後の直腸温を測定した。その結果、いずれもLPSによって上昇した体温を用量依存的に低下させ、解熱作用を示した。
ふむ…。
最後の「解熱作用を示した」だけ分かった。
簡単に説明すると、セレコックスに解熱作用があるのかを確認するため、次の4種類の抗炎症薬で解熱作用の程度を測る比較実験をしました、と。
- セレコキシブ(=セレコックス)
- インドメタシン
- イブプロフェン(=イブ)
- ジクロフェナクNa(=ボルタレン)
結果、セレコックスにも他と同様の解熱作用が見られました、と。
結論、セレコックスに解熱作用はあるっぽい。
まとめ
セレコックスは解熱剤じゃないのに解熱作用があるという訳の分からない結果になりましたが、
解熱作用はあるが、解熱剤としては認可されていない。
と考えればいいんだと思います。
つまり熱があるからと言って、家にあったセレコックスを勝手に飲んで万が一何かあったとしても、医師も歯科医師も薬剤師も責任は取らんぞ、ってことです。
解熱剤としては処方してないんだから。
松原先生もこのように↓。
立場上、セレコックスを解熱剤とは言えないよね。
僕としても「熱がある時はセレコックス飲め」と言いたいのではなく、作用機序や実験レベルのデータでは「セレコックスに解熱作用はあるみたいだぞ」というお話を紹介したかっただけです。
豆知識として楽しんでもらえたなら幸いです。
参考文献
医歯薬出版 口腔生化学 第6版
医歯薬出版 現代歯科薬理学 第6版
おまけ
この記事の公開は3月3日、ひな祭りでした。
実は本日!
松原先生の奥様の誕生日です!
奥様も歯医者さんなので、いずれオレ歯科にご招待予定です!
オレ歯科でまだやったことがない小児歯科が専門の先生です。 乞うご期待ください!